この記事でわかること
- 変形性股関節症(股OA)の基本病態
- ガイドラインで推奨される運動療法
- 理学療法評価で優先したい項目
- 臨床でよくある「痛みが強くて運動できない」ケースへの対応
変形性股関節症(股OA)の基本病態
変形性股関節症とは?
変形性股関節症は、関節軟骨の変性や摩耗を中心に、骨硬化・骨棘形成などを伴いながら進行する疾患です。日本では寛骨臼形成不全を背景とした二次性股OAが多いことが特徴です。
主な症状は以下の通りです。
- 鼠径部痛
- 立ち上がり時痛
- 歩行時痛
- 股関節可動域制限(特に内旋・屈曲)
- 跛行(Duchenne歩行など)
ガイドラインで推奨される運動療法
股OAでは、運動療法が保存療法の中心とされています。特に以下の要素が重要です。
筋力強化
- 股関節外転筋
- 股関節伸展筋
- 体幹筋群
外転筋の筋力低下は、歩行時の骨盤制御低下につながり、疼痛や歩行効率の悪化を招きます。
関節可動域練習
痛みのない範囲で、股関節の屈曲・伸展・外転・内旋を中心に実施します。無理な内旋強制は疼痛を増悪させる可能性があるため注意が必要です。
有酸素運動
- 平地歩行
- 自転車エルゴメータ
- 水中運動
疼痛が強い時期は、荷重量を調整しやすい自転車エルゴメータが選択しやすい印象です。
理学療法評価で優先したい項目
① 疼痛評価
- 安静時痛
- 動作時痛
- 夜間痛
- NRS/VAS
夜間痛が強い場合は、炎症所見や手術適応の検討につながることもあります。
睡眠不足が続いてしまうと運動負荷の調整も必要になります。
② 可動域
特に内旋制限は早期からみられやすく、歩行や靴下動作にも影響します。
③ 筋力
MMTでは以下を重点的に確認します。
- 中殿筋
- 大殿筋
- 腸腰筋
④ 歩行分析
- Trendelenburg徴候
- Duchenne歩行
- 歩幅低下
- 立脚時間短縮
「痛いから歩けない」だけでなく、骨盤制御が破綻していないかを観察することが重要です。
臨床でよくある「痛みが強くて運動できない」ケースへの対応
入院患者、外来でよく経験するのが、
『歩くと痛いので、できるだけ動かないようにしています』
というケースです。
この場合、完全な安静を続けると、
- 筋力低下
- 関節拘縮
- 活動量低下
- 体重増加
が進み、結果的に症状が悪化することがあります。
私がまず行うこと
- 痛みが出る動作を具体的に確認
- 「どの程度なら痛みが許容できるか」を共有
- 短時間・低負荷の運動から開始
- 成功体験を作る
例えば、5分歩行×2回/日から開始し、症状が落ち着けば徐々に時間を延ばしていきます。
エビデンスからみる運動療法の効果
FransenらのCochrane Reviewでは、股OA患者に対する運動療法は、
- 疼痛の軽減
- 身体機能の改善
に有効であることが報告されています。効果量は大きくないものの、副作用が少なく、長期的な機能維持に寄与する点が重要です。
また、単に運動を指導するだけでなく、継続を支援する教育的アプローチが効果を高めるとされています。
今日から使えるポイント
臨床でまず確認したい3項目
- 内旋可動域:早期から制限されやすい
- 中殿筋筋力:骨盤制御に直結
- 歩行時の体幹側屈:代償動作の有無を確認
参考文献
- 日本整形外科学会,日本股関節学会 編.変形性股関節症診療ガイドライン(最新版).南江堂.
- Fransen M, et al. Exercise for osteoarthritis of the hip. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2014.
- Fernandes L, et al. EULAR recommendations for the non-pharmacological core management of hip and knee osteoarthritis. Ann Rheum Dis. 2013.
コメント